(この春は、源氏十八・九歳。前半は「若紫」巻、「末摘花」巻のそれぞれ後半と重なる。)

 藤壷は翌年二月に源氏に生き写しの男子(冷泉帝)を出産した。表立っての臨月の十二月から大幅に遅れた出産が、藤壷をいかに恐怖させたことか。しかしこの異常を物怪のしわざとすることで危機を切り抜けた彼女は、皇子の母として、罪の意識を上回る自覚に生きる人となり変わった。
 帝は、最愛の藤壷の腹に源氏に生き写しの皇子をもうけたことで、その喜びは一途であった。源氏と藤壷はそれぞれに戦慄するほかなく、心事の発覚を恐れる二人はもはや逢うこともできない。源氏は、藤壷の形代として二条院に迎え取った紫の上を愛育することで、やるかたない憂悶をまぎらすのであった。

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