三月も下旬になって、春の御殿の庭は春の盛りのようなありさまである。新造の舟ができたので、源氏はさっそく舟楽を始めた。秋好がちょうど里下りをしていたので、紫の上にもこの様子を見せようとする。そこで舟での秋好方の女房をこちらに来させた。夜に至るまで盛大な音楽会が催された。あくる日からは中宮の方では季節の御読経が始まったので、紫の上はやはり舟に童を乗せて、桜・山吹の花を金銀の瓶に生けて送った。遊宴に招待された青年たちは皆、西の対の姫君(玉鬘)に関心を寄せた。一方玉鬘自身は、それらの人々に対する関心よりは、実父に会いたいと思っていた。
 四月になった。玉鬘のもとにはたくさんの恋文が集まった。源氏はそれぞれ点検し、返事をするように指示する。また右近を呼んで、こうした場合の心得について教える源氏は、何事も母親だと思って自分に相談するようにと言う。もっとも玉鬘には、なかなか実感をもって理解はできない。その後も、源氏は親代わりというのにことよせて、彼女の気を引こうとするがうまくゆかない。源氏が玉鬘のことをほめるものだから、紫の上もいささか警戒気味である。その後の源氏の態度は、しだいに露骨になっていった。玉鬘は養父とのあらぬ噂など立てられたら、と思うといよいよ憂欝である。一方青年たちは、それぞれ希望をつないでいた。

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