源氏は、何かにつけて思うにまかせぬ世を厭わしく思うが、といってさすがに出家にまでは踏み切れなかった。
 五月雨の晴れ間、源氏は亡き桐壷院の女御、麗景殿の邸への訪問を思い立つ。女御の妹の三の君はかつて宮中において源氏と思いを交わした人で、今は姉女御ともども源氏の後援を頼りにひっそりと暮らしていた。途中、中川のあたりで昔なじみの女に消息を入れるが、女の応答は源氏の長い途絶えを恨むものであった。女御を訪ねた源氏は、橘が香り、ほととぎすの鳴く、人影のない邸で、ともに故院の昔を懐かしく回想し、妹の住む対屋にもさりげなく訪れるのであった。

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